医療保険は、病気やケガのときにかかる医療費や収入減に備えられるため、働き盛りの方にとっては重要です。
では、仕事をリタイアした高齢者の場合はどうでしょう。医療保険への加入や継続が必要なのでしょうか?
本記事では、「老後に医療保険はいらない」と言われる理由や老後も医療保険が必要な方の特徴について解説します。
※本記事の価格は全て税込みです。
老後に医療保険はいらないと言われる理由

「老後に医療保険はいらない」と言われる理由は、以下の2つの理由が考えられます。
- 保険料が割高
- 公的医療保険制度がある
保険料が割高

医療保険は、年を重ねると病気やケガのリスクが増すので、保険料は高くなります。
例えば、男性がA社の終身医療保険に終身払いで加入する場合、保険料は以下のようになります。
ご契約日の満年齢 | 最安プラン | 安心プラン |
---|---|---|
20歳 | 650円 | 1,752円 |
30歳 | 845円 | 2,378円 |
40歳 | 1,150円 | 3,417円 |
50歳 | 1,655円 | 5,143円 |
60歳 | 3,290円 | 9,043円 |
安心プラン:入院給付金日額5,000円、手術給付金(入院あり50,000円・入院なし25,000円)、先進医療特約、3大疾病保険料払込免除特約、入院一時金あり、通院一時金あり
若いうちに終身型の医療保険に加入していれば、比較的安い保険料で、一生涯にわたる保障を確保できます。
しかし、上記の表から分かるように60代以降に新規加入しようとすると、保険料は高額です。
さらに、定年退職後に収入が公的年金だけになると、生活費が限られるため、新たに医療保険に加入することに抵抗を感じる方もいるかもしれません。
生命保険に若いうちに入るメリットは?加入のタイミングを解説公的医療保険制度がある

公的医療保険制度は、大きく分けて以下の3つの種類があります。
- 健康保険:会社員や公務員などの被用者とその家族が対象
- 国民健康保険:自営業・農業・無職の方などが加入する、市町村が運営
- 後期高齢者医療制度:75歳以上もしくは、一定の障害を持つ65歳以上の高齢者
会社員の方などは、定年後、国民健康保険に加入するか、退職前に加入していた健康保険の任意継続被保険者になるかを選択できます。
また、家族の健康保険の被扶養者を選択することも可能。
いずれを選んでも、公的医療保険制度の年齢ごとの自己負担割合は、以下の通りです。
年齢 | 自己負担額 |
---|---|
6歳以上69歳以下 (70歳以上でも現役並みの所得者) | 3割 |
70歳以上74歳以下 | 2割 |
75歳以上(65歳以上で一定の障害のある方を含む)の方は、後期高齢者医療制度が適用され、自己負担額が以下のように変わります。
年金収入+その他の合計所得金額 | 自己負担割合(2022年9月末まで) | 自己負担割合(2022年10月1日から) |
---|---|---|
200万円未満 (世帯内に後期高齢者が2人以上の場合は320万円未満) | 1割 | 1割 |
200万円以上383万円未満 (世帯内に後期高齢者が2人以上の場合は320万円以上520万円未満) | 1割 | 2割 |
383万円以上 (世帯内に後期高齢者が2人以上の場合は520万円以上) | 3割 | 3割 |
75歳以上で、仕事をリタイアして年金だけで生活しているなど収入の少ない方は、医療費の自己負担額が1割で済みます。
高額療養費制度
高額療養費制度とは、1ヶ月の間に同じ医療機関で支払った自己負担額の合計が上限額を超えた場合に、その超えた分があとで払い戻される制度です。
自己負担の上限額は、年齢・所得によって決められています。
69歳以下の方・70歳以上の方の上限額は、以下の通り。
適用区分 | ひと月の上限額(世帯ごと) | ||
---|---|---|---|
ア | 年収 | 約1,160万円~ | 252,600円+ (医療費−842,000円)×1% |
健康保険 (標準報酬月額) | 83万円以上 | ||
国民健康保険 (旧ただし書き所得※1) | 901万円超 | ||
イ | 年収 | 約770 ~約1,160万円 | 167,400円+ (医療費−558,000円)×1% |
健康保険 (標準報酬月額) | 53万 ~79万円 |
||
国民健康保険 (旧ただし書き所得※1) | 600万 ~901万円 |
||
ウ | 年収 | 約370 ~約770万円 | 80,100円+ (医療費−267,000円)×1% |
健康保険 (標準報酬月額) | 28万 ~50万円 |
||
国民健康保険 (旧ただし書き所得※1) | 210万 ~600万円 |
||
エ | 年収 | ~約370万円 | 57,600円 |
健康保険 (標準報酬月額) | 26万円以下 | ||
国民健康保険 (旧ただし書き所得※1) | 210万円以下 | ||
オ | 住民税非課税者 | 35,400円 |
手術代や薬代など1ヶ月に何十万円かかったとしても、上限額を超える医療費の負担はありません。
適用区分 | ひと月の上限額 外来(個人ごと) | ひと月の上限額 外来(世帯ごと) |
||
---|---|---|---|---|
現役並み | 年収 | 約1,160万円~ | 252,600円+ (医療費−842,000円)×1% |
|
標準報酬月額 | 83万円以上 | |||
課税所得 | 690万円以上 | |||
年収 | 約770 ~約1,160万円 | 167,400円+ (医療費−558,000円)×1% |
||
標準報酬月額 | 53万円以上 | |||
課税所得 | 380万円以上 | |||
年収 | 約370 ~約770万円 | 80,100円+ (医療費−267,000円)×1% |
||
標準報酬月額 | 28万円以上 | |||
課税所得 | 145万円以上 | |||
一般 | 年収 | 156万円 ~約370万円 | 18,000円 (年144,000円) | 57,600円 |
標準報酬月額 | 26万円以下 | |||
課税所得145万円未満等 | 145万円未満 | |||
住民税非課税等 | Ⅱ住民税非課税世帯 | 8,000円 | 24,600円 | |
Ⅰ住民税非課税世帯(年金収入80万円以下など) | 15,000円 |
また、高額療養費制度には、世帯合算・多数回該当という仕組みがあり、さらに医療費の負担を減らせます。
- 世帯合算:同じ世帯なら、窓口でそれぞれが支払った自己負担額を合算して請求できる
- 多数回該当:過去12か月以内に3回以上、上限額に達した場合、4回目から上限額が下がる
高額療養費制度を利用すれば、一定の限度額以上の医療費は支払わなくて済みます。
医療費が高額になることが予想される場合、「限度額適用認定証」を医療機関に提示すれば、支払額が自己負担の上限で済み、医療費の立替がありません。
医療費の自己負担はどれくらい?

病気やケガで入院したときには、どれぐらいの医療費がかかるのでしょうか。
生命保険文化センターが行った「令和元年度 生活保障に関する調査」のデータを見ていきましょう。
直近の入院時の1日あたりの自己負担費用
「直近の入院時の1日あたりの自己負担費用」は、過去5年間に入院し、自己負担費用を支払った人368人を対象としたデータです。(高額療養費制度を利用した人+利用しなかった人を含む)
自己負担額 | 5,000円 未満 | 5,000~ 7,000円 未満 | 7,000~ 10,000円 未満 | 10,000~ 15,000円 未満 | 15,000~ 20,000円 未満 | 20,000~ 30,000円 未満 | 30,000~ 40,000円 未満 | 40,000円 以上 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
割合(%) | 10.6 | 7.6 | 11.1 | 24.2 | 9.0 | 12.8 | 8.7 | 16.0 |
病気やケガで入院すると、治療費や薬代のほか、差額ベッド代や食事代、衣類や日用品などの購入費も必要です。
そのため、1日あたり平均23,300円の自己負担がかかります。
高齢になるほど入院日数が長くなる
「直近の入院時の入院日数」は、過去5年間に入院した人549人を対象に、年代別の入院日数を調べています。
入院日数 | 5日未満 | 5~7日 | 8~14日 | 15~30日 | 31~60日 | 61日以上 | 平均 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
全体 | 20.9% | 27.3% | 27.1% | 15.7% | 5.3% | 3.6% | 15.7% |
20代 | 25.0% | 34.4% | 21.9% | 12.5% | 0.0% | 6.3% | 14.4% |
30代 | 25.4% | 31.3% | 25.4% | 10.4% | 4.5% | 3.0% | 13.5% |
40代 | 25.0% | 32.1% | 24.1% | 12.5% | 4.5% | 1.8% | 12.3% |
50代 | 18.9% | 30.3% | 28.0% | 13.6% | 6.1% | 3.0% | 15.2% |
60代 | 18.7% | 19.7% | 29.3% | 20.7% | 6.6% | 5.1% | 19.0% |
表からは、高齢になるほど入院日数が長くなることが分かります。
特に、入院日数が15日~30日の割合が、30代では10.4%なのに対して、高齢者の場合は20.7%と約2倍。
1日あたりの平均23,300円には、高額療養費を使ったケースも含まれている点がポイントです。
主な収入が公的年金だけの場合、突然大きな医療費の負担があると困りますよね。
老後に医療保険が必要な方
以下のような方は、老後も医療保険に加入しておくのがおすすめです。
- 十分な貯蓄がない方
- 年金額に不安がある方
- 長期入院したときの費用が不安な方
- 先進医療を受けたい方
十分な貯蓄がない方

公的医療保険制度の被保険者は、医療費の7割~9割を公的医療保障でまかなえます。
高額療養費制度を利用すれば、一定の限度額以上の医療費は支払わなくて済みます。
しかし、入院時の差額ベッド代や食事代などは対象外です。
老後に十分な貯蓄がないと、医療費が支払えないかもしれません。
支払えたとしても、老後のために蓄えた貯金を大きく取り崩す可能性もあります。
十分な貯蓄がない方は、医療保険で備えておくと安心です。
年金額に不安がある方
将来の公的年金額に不安がある方も、医療保険に加入しておくのがおすすめです。
公的年金には、国民年金と厚生年金があり、会社員や公務員の方は、両方の給付が受けられます。
しかし、自営業やフリーランスの方は、加入できるのが国民年金のみ。給付額が少なくなってしまいます。
年金制度 | 令和4年度年金額(月額) |
---|---|
国民年金 | 64,816円(満額) |
厚生年金 | 219,593円 (夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額) |
特に自営業やフリーランスの方は、将来の公的年金額が少ないため、医療費がかかると生活費を圧迫するおそれがあります。
医療保険に加入していれば、医療費が発生したときの経済的リスクを軽減できます。
長期入院したときの費用が不安な方

公的医療保険制度の被保険者であれば、高額療養費制度や医療費の負担を大幅に軽減できます。
ただし、高齢になると入院期間が長くなる傾向があるため、医療費が高額になる可能性があります。
長期入院の費用が不安な方は、高齢の方でも民間の医療保険で備えておきましょう。
先進医療を受けたい方
先進医療とは、高度の医療技術を用いた治療方法のことです。
先進医療の技術料は、公的医療保険制度の対象外なので、全て自己負担になることが一般的。
しかし、医療保険に先進医療特約を付けておくと、先進医療を受けたときに先進医療給付金が支払われます。
先進医療特約の保障額は、通算2,000万円までとしている保険会社がほとんどです。
老後に医療保険がいらない方
老後に医療保険がいらないと考えられるのは、以下のような方です。
- 潤沢な貯蓄がある方
- 毎月現役並みの収入がある方
潤沢な貯蓄がある方や、不動産収入などで現役並みの収入がある方は、老後に高額な医療費が発生したとしも十分な支払い能力があります。
そのため、高い保険料を支払って医療保険に加入する必要性は低いでしょう。
ただし、75歳以上の方でも収入が多ければ、医療費の自己負担は3割負担です。
老後の医療保険選びのポイント

老後の医療保険選びのポイントは以下の通りです。
- 必要最低限の保障を選ぶ
- 健康状態に不安のある方は、引受基準緩和型医療保険も検討する
- 必要な保障を早めに準備する
必要最低限の保障を選ぶ
老後に医療保険に加入しようとすると保険料が高くなるので、自分にとって必要な保障に絞って加入するのがおすすめです。
公的医療保険制度でまかなえない分を医療保険で補うというイメージで、必要な保障を選びましょう。
健康状態に不安のある方は、引受基準緩和型医療保険も検討する

引受基準緩和型医療保険とは、加入条件を通常の医療保険よりも緩和した保険です。
持病や、手術歴があっても加入しやすくなっているので、健康状態に不安のある方は、検討してみましょう。
引受基準緩和型医療保険は保険料が高いので、一般の医療保険に申し込んで、確実に一般の医療保険に加入できないことが分かってから検討しましょう。
必要な保障を早めに準備する
医療保険は高齢になると、保険料が急激に上昇する傾向があります。
そのため、高齢で医療保険を検討する際はなるべく早めに準備することを心がけましょう。
できれば保険料の安い若いうちに、終身型の医療保険に加入しておくと安心です。
十分な貯蓄がない・年金額に不安がある方は、医療保険で備えておくと安心
老後に医療保険はいらないと言われることもありますが、以下のような方は医療保険に加入しておくと安心です。
- 十分な貯蓄がない方
- 年金額に不安がある方
- 長期入院したときの費用が不安な方
- 先進医療を受けたい方
ただし、老後に加入しようとすると保険料は高額になります。
老後に医療保険に加入する際には、公的医療保険制度とのバランスを考えて、必要最低限の保障に抑えることが大切です。
どのような医療保険が自分に合っているのか分からない方は、まず無料の保険相談に問い合わせてみましょう。