収入保障保険は、被保険者に万が一のことがあった場合に、遺された家族が定期的に保険金を受け取れる死亡保険です。
契約時に決めた「毎月10万円」などの年金額を継続的に受け取れるので、生活費や教育費などの備えとして活用できます。
本記事では、収入保障保険のメリット・デメリットをまとめました。
所得補償保険・就業不能保険との違い、収入保障保険と定期保険のどちらを選ぶべきかなどにも触れるので参考にしてください。
- 割安な保険料で合理的に備えられる
- 年金形式で受け取れるため計画的に使える
- 見直しの必要性が低い
- 税額控除が受けられる
- 解約返戻金がない
- 保険金の額が減っていく
- 一括での受け取りには適していない
- 年金を受け取る際に税金がかかる
※本記事の価格は全て税込みです。
収入保障保険とは
収入保障保険は、家計を支える方が、死亡または高度障害状態になった場合に、遺された家族の生活費や教育費を用意するための死亡保険の一種です。
被保険者に万が一のことがあった際、年金形式で保険金を受け取れます。
毎月の給料のように定期的に保険金を受け取れるため、遺された家族の生活費に充てやすいのが特徴です。
保険期間は、20年・30年など一定の年数で決めるもの、55歳まで・60歳までと年齢で決めるものがあります。
一般的な定期保険は、保険期間中の保険金が一定なのに対し、収入保障保険は保険期間の経過とともに保険金の額が減少します。
その分保険料が割安なのが特徴です。
所得補償保険、就業不能保険との違い
収入保障保険と似た名前の保険に、所得補償保険や就業不能保険もあります。
収入保障保険とこれらの保険との違いを確認しましょう。
項目 | 収入保障保険 | 所得補償保険 | 就業不能保険 |
---|---|---|---|
保険の種類 | 生命保険 | 損害保険 | 生命保険 |
保険の目的 | 遺された家族の生活費などに備える | 働けなくなったときの収入減少に備える | |
死亡保障 | あり | なし | |
保険金支払いの条件 | 死亡・高度障害状態になった場合 | 病気やケガで働けなくなった場合 | |
受取人 | 家族 | 本人 | |
受取方式 | 年金形式(一括も可能) | 年金形式 |
最大の違いは以下の点です。
- 収入保障保険
万が一のことがあった場合に、遺された家族の生活を支えるために加入する保険 - 所得補償保険・就業不能保険
病気やケガで働けなくなったときの収入減少に自ら備えるための保険
収入保障保険は遺族に遺すためのものであるのに対し、所得補償保険・就業不能保険は収入減少に陥った際の自らの生活に備える保険です。
所得補償保険・就業不能保険の場合は死亡保障は付いておらず、性質が全く異なるので注意しましょう。
定期保険と収入保障保険の違い
定期保険も、収入保障保険と同じく死亡保険の一種です。
契約期間があらかじめ決まっている点や、掛け捨て型保険である点は共通しています。
項目 | 収入保障保険 | 定期保険 |
---|---|---|
保険金の受取金額 | 一定 | 減少していく |
保険金の受取方法 | 年金/一時金 | 一時金 |
保険料 | 定期保険より割安 | 収入保障保険より割高 (終身保険より割安) |
満期保険金/解約返戻金 | なし | なし |
定期保険と収入保障保険の大きな違いは、保険金の受取方法です。
一般的な定期保険は、万一のことがあった場合にまとまった金額が一括で支払われます。
一方、収入保障保険は、万一のことがあった場合、保険期間が満了するまで「毎月10万円」というように給付金が定期的に支払われる仕組みです。
定期保険は、いつ亡くなっても同じ金額の保険金が支払われるのに対し、収入保障保険は、加入した直後が最も保険金の総額が高く、保険期間が経過するごとに減っていきます。
ただし、その分定期保険と比べて保険料が割安な傾向にあります。
一般的な定期保険は、契約の更新もできますが、更新時の年齢で保険料が決まるため、更新前より高くなる点に注意が必要です。
収入保障保険のメリット
収入保障保険に加入すると、以下のメリットがあります。
- 割安な保険料で合理的に備えられる
- 年金形式で受け取れるため計画的に使える
- 見直しの必要性が低い
- 税額控除が受けられる
割安な保険料で合理的に備えられる
収入保障保険は、一般的な定期保険や終身保険と比べて保険料が割安な傾向にあります。
保険期間が限られているのに加え、保険期間が経過するほど受け取る保険金が減っていく仕組みだからです。
住宅の購入や子どもの独立といったライフイベントを迎えるごとに、必要な保障額は減るのが一般的です。
収入保障保険なら、保険で備えるべき必要額の減少に合わせて保険金も減っていくため、その分割安な保険料で備えられます。
年金形式で受け取れるため計画的に使える
給料のように、年金形式で毎月一定額を受け取れるのも、収入保障保険の大きなメリットです。
まとまった額で死亡保険金を受け取ってしまうと、計画通りに使いにくく、いざ必要なときに足りなくなるリスクがあります。
見直しの必要性が低い
保険見直しの必要性が低いのも、メリットの1つです。
収入保障保険は、ライフステージの変化により年月が経過すると必要なお金は減るという考えのもと、保険期間が経過するほど保険金の額が減っていきます。
一般的な定期保険なら、備えるべき額が減少するとともに保険の見直しを行う必要がありますが、収入保障保険なら、生活が大きく変わらない限り見直す必要性は低いと言えるでしょう。
税額控除が受けられる
収入保障保険の保険料は、生命保険料控除の対象です。
生命保険料控除のうち、収入保障保険は一般生命保険料控除の対象となり、所得税・住民税の負担を軽減できます。
ただし、税額控除には上限が決まっているため、他にも死亡保険などに加入している場合は、注意が必要です。
収入保障保険のデメリット
一方で、収入保障保険には、以下のようなデメリットもあります。
- 解約返戻金がない
- 保険金の額が減っていく
- 一括での受け取りには適していない
- 受け取る際に税金がかかる
解約返戻金がない
収入保障保険は掛け捨て型の保険であり、解約返戻金がない点はデメリットです。
被保険者が保険期間中に死亡・高度障害状態に至らなかった場合、支払った保険料は戻ってきません。
収入保障保険は、あくまでも遺された家族の生活を守るためのものであり、自身の老後資金の備えには適していません。
保険金の額が減っていく
収入保障保険は、保険期間の経過とともに受け取れる保険金の額が減っていく保険です。
必要なときに手厚い保障が受けられ、不要な部分の保障を減らすことで保険料を抑えられるのがメリットですが、保険期間満了まで大きな保障を付けたい方には向いていません。
一括での受け取りには適していない
収入保障保険金の受け取りは、基本的には年金方式です。
一括方式でまとまった額を受け取ることもできますが、年金形式で受け取るときと比べて受取総額が少なくなってしまいます。
自宅のリフォーム資金や子どもの進学など、まとまった額を備えたい方にはあまり適していません。
保険金を受け取る際に税金がかかる
収入保障保険の死亡保険金を受け取ると、税金がかかるケースがあります。
定期保険などの死亡保険金(一括受取)にかかる税金は、以下のとおりです。
パターン | 契約者(保険料負担者) | 被保険者 | 受取人 | 税金 |
---|---|---|---|---|
1 | 夫 | 夫 | 妻 | 相続税 |
2 | 夫 | 妻 | 夫 | 所得税・住民税 |
3 | 夫 | 妻 | 子 | 贈与税 |
最も多いパターン1の、契約者=被保険者=夫が亡くなり、受取人=妻が受け取るケースでは相続税の課税対象です。
ただし、受取人が相続人の場合非課税枠が大きく、相続額がよほど大きくない限り相続税はかからないのが一般的です(参考:No.1750 死亡保険金を受け取ったとき|国税庁)。
一方、収入保障保険のように死亡保険金を分割で受け取る場合は、一括受取の場合と課税方法が異なります。
- 被保険者死亡時に受け取る保険金(1年目)
相続税or所得税or贈与税の対象 - 年金形式で受け取る保険金(2年目以降)
所得税・住民税の対象
1年目は、パターン1のケースだと相続税の対象です。
2年目以降の年金形式で受け取る保険金は雑所得として扱われ、所得税・住民税が課されます。
ただし、受け取った年金すべてが課税対象となるわけではありません。
払い込んだ保険料にもよるため、課される税額はそこまで大きくならないのが一般的です。
収入保障保険の選び方
収入保障保険を選ぶ際には、以下のポイントに注目しましょう。
- 毎月の受取額
- 受取方法の種類
- 最低支払保証期間
毎月の受取額
収入保障保険は、毎月10万円、20万円など保険金の額を設定できます。
遺された家族の収入・生活費がいくらなのかをシミュレーションしたうえで、毎月の受取額を決めましょう。
なお、家計を支えていた方が死亡した場合、条件を満たせば遺された家族に遺族年金が支給されます。
年金の加入状況や子供の有無などで、もらえる遺族年金の額が異なるため、事前の確認が大切です。
遺族年金などの収入も考慮したうえで、公的制度で不足する部分を、収入保障保険で備えましょう。
受取方法の種類
収入保障保険は年金形式で受け取るのが一般的ですが、保険商品によっては一括で受け取ることもできます。
一括受け取りに対応していれば、急にまとまった額のお金が必要になったときに役立ちます。
ただし、一括で受け取ると総額が減ってしまうため、基本的には年金方式で受け取るのがおすすめです。
最低支払保証期間
収入保障保険を選ぶ際は、最低支払保証期間にも目を向けましょう。
例えば、最低支払保証期間が5年に設定した場合、保険期間満了2年前に死亡したとしても、5年間分の保険金を受け取れます。
収入保障保険の性質上、亡くなるタイミングによって受け取れる年金額に大きな差が出てしまいます。
- 40歳0ヶ月で死亡⇒保険金受取総額は2,400万円
- 59歳11ヶ月で死亡⇒保険金受取総額は10万円
このように、保険期間満了目前に死亡したケースでは、保険金額が少なくなってしまうため、最低限受け取れる金額を保証するために、最低支払保証期間が設けられています。
満期まで保障があれば十分なら、最低支払保証期間はなし、あるいは1~2年ほどの短期でよいでしょう。
以下の年数を目安に、最低支払保証期間を決めるのもおすすめです。
- 配偶者が65歳(老齢年金の支給開始)まで
- 末子の成年まで
収入保障保険と定期保険どちらがおすすめ?
収入保障保険と定期保険どちらに加入すべきなのか迷っている方も多いでしょう。
収入保障保険・定期保険が、それぞれどういった方に適しているのかをまとめました。
- 給料のように毎月保険金を受け取りたい方
- 遺された家族の生活が心配な方
- 余分な保障を省いて保険料を抑えたい方
- 保険金を一括で受け取りたい方
- 葬儀費用などに備えたい方
- 今後のプランを立てにくい方
収入保障保険が適している方
収入保障保険は、遺された家族が年金形式で保険金を受け取れるのが大きな特徴です。
自分に万が一のことがあった場合、家族の生活が維持できるか不安な方に適しています。
また、多くの方はライフステージの変化に応じて必要な保障額は減っていくのが一般的です。
定期保険が適している方
一方、定期保険は万が一のことがあった場合に、まとまった額で保険金を受け取ることができます。
葬儀費用・結婚式費用など、遺された家族にある程度まとまったお金を遺したい方におすすめです。
保険期間満了までは手厚く保障を用意しておきたいなら、定期保険を選びましょう。
収入保障保険がおすすめな方
収入保障保険について、改めて確認しましょう。
- 遺された家族の生活費に備えたい方
- 自分の収入で家計を支えている方
- これから教育費がかかる子どもがいる方
- 自営業やフリーランスなど遺族年金が少ない方
- 保険金の見直しが苦手な方
収入保障保険は、万が一のことがあった場合に、遺族に定期的に保険金が支払われる死亡保険です。
毎月給料のように受け取れるため、生活費に充てやすく使いすぎも防げます。
また、保険期間が経過するごとに受け取れる保険金の額が減っていく分、月々の保険料を抑えられるのもメリットです。
一方で、解約返戻金がない、まとまった保険金の受け取りには向かないといった注意点もあります。
自分に合った収入保障保険がわからない方は、ぜひ専門家へ相談してみてください。