認知症保険とは、認知症と診断された場合や要介護状態になった場合などに保険金を受け取れる保険のことです。
高齢化により認知症の方が増えており、認知症を患った際の経済不安を抱えている方も少なくないでしょう。
本記事では、近年注目されている認知症保険についてまとめました。
認知症保険が求められている理由や保障の条件、選ぶ際のポイントなど詳しく解説します。
認知症が不安な方や老後について考え始めた方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
- 認知症と診断された場合などに一時金が支払われる保険
- 一般的には器質性認知症が対象だが、軽度認知障害で保障されるケースも
- 認知症人口が増えていることや介護費用の高額化により注目が集まる
- 指定代理請求人の指定や家族への共有が大切
※本記事の価格は全て税込みです。
認知症保険とは
認知症保険とは、認知症と診断された場合に給付金が支払われる保険のことです。
認知症への備えとして民間介護保険がありますが、要介護2以上の認定を受けなければ給付金が支払われないケースが多いです。
一方、多くの認知症保険の給付条件は、認知症と診断されることのみとなっています。
加入できる年齢は商品により異なり、80歳までのものもあれば85歳まで加入できるものもあります。
介護が必要になったときに利用できるものには、公的介護保険もあります。
公的介護保険は介護サービスを利用できる「現物給付」ですが、認知症保険は現金で受け取れるのも特徴です。
なお、認知症保険には、認知症の方が他人に危害を加えるなどのトラブルを起こした際の損害賠償責任に備えられる損害保険もあります。
- 生命保険会社の認知症保険
認知症と診断された場合などに給付金が支払われる - 損害保険会社の認知症保険
認知症が原因で他人や他人の物に損害を加えてしまい賠償責任を負った場合の費用を補てんする
本記事では、前者の生命保険会社の認知症保険について説明します。
認知症保険が注目される背景
認知症保険が必要かどうか迷っている方も多いでしょう。この章では、認知症保険が注目されている背景を説明します。
- 高齢化による認知症人口の増加
- 介護費用の高額化
高齢化による認知症人口の増加
内閣府の「令和2年版高齢社会白書」によると、日本の高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合)は28.4%です。
高齢化が進むなかで認知症人口も増加の一途をたどっています。
画像引用元:認知症患者はどれくらい?|リスクに備えるための生活設計|ひと目でわかる生活設計情報|公益財団法人 生命保険文化センター
平成29年版高齢社会白書では、2012年は7人に1人だった認知症患者数が、2025年には約5人に1人になるという推計が発表されています。
このような結果から、誰にでも認知症になるリスクがあることが分かります。
介護費用の高額化
介護費用の高額化も、認知症保険が注目されている理由のひとつです。
公益財団法人家計経済研究所が発表した「在宅介護のお金と負担(2016年)」によると、認知症の程度が重くなるほど介護にかかる費用も重くなります。
さらに、要介護者の介護が必要になった原因として最も多いのが認知症です。
例えば、要介護1の場合、認知症の程度が軽度なら介護費用は平均月2.8万円ですが、重度になると平均月5.7万円に。
また、要介護2・3の場合は、認知症が軽度でも平均月4.1万円、重度なら平均月7.5万円という結果でした。
認知症になると、治療費はもちろん通院費や介護サービスの費用、施設の入居費用などさまざまな費用が発生します。
さらに、家族が働けなくなり収入が減少するリスクなどもあるでしょう。
こういった経済的負担を少しでも減らすための保険として、認知症保険が注目されているのです。
認知症保険の保障対象と給付内容
認知症保険に加入していると、医師により認知症と診断されると、まとまった一時金(認知症診断保険金)が支払われるのが一般的です。
ただし、条件は保険商品により異なるので注意しましょう。
診断に加えて、「公的介護保険制度で要介護1と認定されたとき」「その状態が180日間継続したとき」といった条件を満たさなければ対象とならない商品もあります。
なお、保障の対象となるのは、以下のような器質性認知症であることが一般的です。
- アルツハイマー病の認知症
- 血管性認知症
- パーキンソン病の認知症
- レビー小体型認知症など
認知症保険には、診断されたときに受け取れる一時金のほか、以下のような給付があります。
給付金の種類 | 概要 | |
---|---|---|
診断保険金 | 認知症 | 医師による認知症の診断を受けた場合に支払われる一時金 |
軽度認知障害 | 医師による軽度認知障害の診断を受けた場合に支払われる一時金 | |
認知症治療保険金 | 認知症と診断され、その状態が所定の日数以上継続する場合に受け取れる保険金 | |
認知症治療年金 | 認知症と診断され、その状態が所定の日数以上継続する場合に年金形式で受け取れるもの | |
その他 | 認知症にならない場合に支払われる保険金など |
認知症保険選びのポイント
認知症保険を選ぶ際のポイントを解説します。
- 保障対象となる認知症の種類や条件
- 免責期間
- 給付金の内容や受け取り方
- 保険料の払い込み免除
- 認知症以外の保障
保障対象となる認知症の種類や条件
保障対象になる認知症の種類や支払われる条件について、必ず確認しておきましょう。
器質性認知症の場合のみ保険金が支払われるのか、軽度認知障害(MCI)の場合も受け取れるのかがポイントになります。
軽度認知障害(MCI)は対象外の保険も少なくないので、よく確認してくださいね。
また、診断されただけで給付されるのか、診断に加えて要介護認定が必要なのかも重要な項目です。
免責期間
免責期間があるのか、ある場合はどのくらいの期間なのかも確認しましょう。
免責期間中に認知症の診断を受けても、保険金を受け取れません。
保険会社により異なりますが、1年・2年など長めに設定されていることが多いです。
給付金の内容や受け取り方
給付金額はもちろんですが、一時金で受け取れるのか、年金形式なのかなども確認しましょう。
また、保険によっては要介護度により給付金額が異なるものもあります。
保険料の払い込み免除
所定の高度障害状態などになった場合に、以降の保険料払い込みが免除されるかどうかもポイントです。
保険料の払い込みが免除される条件なども保険により異なります。
保険料の払い込み免除があれば、所定の状態になった場合に、それ以降の保険料を払い込まなくても保障が受けられるので安心です。
認知症以外の保障
認知症保険によっては、認知症以外のリスクに対しても備えられます。
- 骨折に対する保障
- 新型コロナウイルスなどによる入院の保障
- 災害死亡保障など
認知症予防の給付金や、認知症にならなかった場合のお祝い金などが支払われる保険もあるので、よく確認しましょう。
また、電話で相談できるサービスや、セカンドオピニオンが受けられるサービスなどが付帯する保険もあります。
認知症保険を有効活用するために
いざというときに保険金を受け取れないことがないように、認知症保険に関する以下のポイントを押さえておきましょう。
- 家族に共有しておく
- 指定代理請求人を指定しておく
- 家族登録制度を利用する
家族に共有しておく
家族や親戚などが認知症保険の加入の状況などを知らないと、いざ認知症や要介護状態になったときに保険金を請求できません。
認知症に備えるために加入する保険であるのに、必要なときにお金を受け取れなければ元も子もありません。
認知症保険に加入することや内容を伝えるのはもちろん、認知症保険以外の保険などについても加入状況を把握し、家族や親戚に話しておきましょう。
指定代理請求人を指定しておく
認知症保険に加入する際には、指定代理請求人を指定して内容などを共有しておきましょう。
いざ認知症になったら、保障が受けられるにもかかわらず自ら保険金を請求できない可能性があります。
加入時に指定代理請求人に相談して共有しておけば、自身で請求するのが難しい場合に代わりに手続きをしてもらうことができます。
指定代理請求人として名前を書いただけでは保険金の請求はできません。指定する相手に事前に話しておくことが重要です。
家族登録制度を利用する
万一のために、家族登録制度に家族を登録しておくことも大切です。
家族登録制度とは、登録された家族が契約者に代わって契約内容の問い合わせなどができる制度です。
事前に家族を登録しておけば、契約内容の確認などを本人の代わりに行えます。
登録された家族に各種書類などが送付されるほか、災害などにより本人と連絡がつかない場合にも、登録された家族に連絡がきます。
家族のためにも備えておきたい認知症保険
認知症保険についてもう一度おさらいしましょう。
- 認知症と診断された場合などに一時金が支払われる保険
- 一般的には器質性認知症が対象だが、軽度認知障害で保障されるケースも
- 認知症人口が増えていることや介護費用の高額化により注目が集まる
- 指定代理請求人の指定や家族への共有が大切
認知症保険は、認知症と診断された場合などにまとまったお金が受け取れる保険です。
多くは診断された時点で給付を受けられるので、治療費・通院費・住宅の改修費などさまざまな費用に充てられます。
認知症保険の必要性は個人により異なりますが、家族ともよく話し合って認知症にしっかり備えましょう。
指定代理請求人や家族登録制度を活用し、認知症保険をしっかり役立てるためにも、専門家に相談しながら加入手続きを進めてくださいね。